Burns, T., & Stalker, G. M. (1961). The management of innovation. London, UK: Tavistock Publications.  【解説】


 英国のバーンズ=ストーカーは、組織がその各メンバーに対して彼自身と他のメンバーの行為を制御する権利と制御される義務、そして情報を受ける権利と伝える義務とを与え、定める機構として管理システム(management system)を定義した(Burns & Stalker, 1961, p.97)。そして、表1のように、両極端の管理システム、機械的システム(mechanistic system)と有機的システム(organic system)の特徴を挙げている。このうち、機械的システムが、官僚制に相当する管理システムで、その特徴を裏返したものが有機的システムだという位置づけである。バーンズ=ストーカーは、英国イングランドとスコットランドの20の企業を調べ、変化率の小さな環境では官僚制に相当する機械的システムが、変化率の大きな環境では有機的システムがうまく機能すると主張した。具体的に提示された証拠が乏しい主張ではあったが、これがコンティンジェンシー理論の嚆矢とされる研究である。

表1. 機械的システムと有機的システムの特徴
機械的システム有機的システム
(a)企業全体の課業は職能別課業に専門化専門的知識・経験が企業の共通課業に貢献
(b)個々の課業は抽象的個々の課業は具体的
(c)各階層では、直接の上司が調整他の人との相互作用を通して調整・継続的再定義
(d)権利、義務、方法の正確な定義誰か他人の責任として片付けない
(e)権利、義務、方法を職能的責任に置き換える技術的な定義を越えての企業とかかわる
(f)統制、権限、伝達の階層構造統制、権限、伝達のネットワーク構造
(g)情報は階層トップに独占的に集中する情報はその場限りのセンターに集められる
(h)メンバー間の相互作用の垂直的傾向組織内伝達は垂直というより水平方向
(i)上司の指示・決定で作業、行動伝達の内容は指示・決定よりも情報・助言
(j)企業への忠誠、上司への服従を強要企業全体の課業や進歩への積極的関与を重んじる
(k)内部の知識、経験、技能を重視企業外で有効な関係・専門知識を重視
(出所) Burns and Stalker (1961, pp.119- 122)の(a)〜(k)の記述を簡略化したもの。


Handbook BizSciNet

Copyright (C) 2017 Nobuo Takahashi. All rights reserved.