Drucker, P. F. (1971). (1971). What we can learn from Japanese management. Harvard Business Review, 49(2), 110-122.

 1945年8月15日に、日本は第二次世界大戦の敗戦を迎えるが、戦後、比較的早い時期から、「進んだ米国の経営に対比して遅れた日本の前近代的な経営」というニュアンスを込めて「日本的経営」という言葉が日本国内で使われるようになったといわれている。しかし、1960年代の日本経済の高度成長期を経て、1970年代になると、欧米の学者によって「日本的経営」の見直しが行われるようになった。つまり、日本企業の経営スタイルにも積極的に評価すべきところがあるというのである。それまでの日本的経営に関する否定的評価が肯定的評価に変わったターニング・ポイントともいえるのが、ドラッカー(Peter F. Drucker; 1909-2005)によって1971年に発表されたこの論文だった。ドラッカーは、当時の米国の経営者の直面する最重要課題として三つを挙げ、日本の経営者がこれらの問題に対して欧米とは異なる対処の仕方をしていることが、日本の経済成長の重要な要因だとした。すなわち、

  1. 効果的な意思決定: 日本企業ではコンセンサス(合意)に基づく決定が行われ、決定に時間はかかるが実行は速いと、いわゆる稟議制度を評価する。
  2. 雇用保障と生産性等との調和: 日本企業では終身雇用と年功制度により、雇用を保障することで、従業員の心理的保障と生涯訓練による生産性向上がはかられ、これは米国における失業補償、先任権といった制度よりも優れている。
  3. 若手管理者の育成: 日本企業では大学の先輩・後輩からなる非公式なグループがあり、それに乗って教育と人事考課のシステムが機能するために、意思疎通に優れ、長期間の多面的な評価でトップ・マネジメントを選抜するのに効果的である。

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