Maynard, H. B., Stegemerten, G. J., & Schwab, J. L. (1948). Methods-time measurement. New York, NY: McGraw-Hill.
邦訳, Harold B.Maynard, G.J.Stegemerten, John L.Schwab (1956)『MTMメソッド〜タイム設定法』(林茂彦 訳). 技報堂.  【解説】


 複雑な活動も、基本動作(basic motion)に要素分解して、その要素の単位時間を合計することで、全体の標準時間を算出できると考えて、テイラーが提案したのが時間研究だった。こうした中で、単位課業の時間を総和して時間標準を設定する「方式」が数多く考案された。メイナード=ステジマートン=シュワブが著した『メソッド・タイム設定法』(Methods-time measurement)は、そのような方式の一つである(March & Simon, 1993, pp.34-35 邦訳p.20)。同書は時間研究と動作研究の良いところを一つにまとめた作業工学(methods engineering)の立場をとっており、メソッド・タイム設定法は、作業方法と時間を同時に考える手法とされる(ch.1)。

 メソッド・タイム設定法では、手をのばす、移動する、まわす、つかむ、定置する、分離する、手を放す、という七つの動作(motion)ごとにデータを集めて時間データ表が作成される。その際、同じ動作でも、条件と移動距離によって所要時間が異なるので、条件で場合分けした上で、各動作の標準時間を測定して、より正確な所要時間を求める。たとえば、「手をのばす」については、「その前に手が動いているかどうか、移動距離、手をのばす対象が正確に置かれているか」で時間が変わってくる。そこで、始点・終点で手が動いているかどうかで三つ、手をのばす対象の状態で五つに場合分けする。さらに移動距離の求め方は、数行では要約できないほど緻密で複雑である(ch.5)。

 にもかかわらず、マーチ=サイモン(March & Simon, 1993, p.35 邦訳p.21)によれば、人間は機械よりもはるかに複雑なので、こうした試みには限界があった。実際、工業的職務の時間標準を構成単位の標準データから合成できるケースは限られ、通常は直接推定されている。また時間研究では、(ほとんど)同じ課業を実行する人々を標本とし、そこでの測定時間を単純に平均して時間標準を求める傾向があるが、熟練や努力の違いを考慮して測定時間を標準化する手法が大雑把で、そもそも標準時間が「平均的技能と平均的努力のときの平均時間」なのか、「最短時間」なのか、それとも「工員集団から無作為抽出した複数個人による連続試行の平均時間」なのかも、多くの場合あいまいである。

 と批判をするものの、実はサイモンもゲッコウとの実験(Guetzkow & Simon, 1955)では、このメソッド・タイム設定法を使っていた。しかし、当該論文はマーチ=サイモンの第6章でも引用されているのだが、原典(初版p.143; 第2版p.164)の記述では、なぜか "methods-analysis technique" と表記され、そのことが明示的ではない。ひょっとすると、自分たちも研究に使っていたことを隠したかったのかもしれない。

 さらに言えば、マーチ=サイモンは、メソッド・タイム設定法の七つの動作をサーブリッグ(therblig)と呼んでいるが(March & Simon, 1993, p.35)、そもそも「手をのばす(reach)」「まわす(turn)」などはサーブリッグにはなく、明らかな間違いである。実際、「手をのばす」はサーブリッグの「空荷運び(transport empty)」と「荷運び(transport loaded)」の違いがあいまいで、たとえば、手にハサミを持ったまま手をのばす場合は、どちらに分類するか人によって異なったりするので、それを避けるために、両者を合わせて「手をのばす」と呼ぶことにしたとしているくらいで(ch.5)、マーチ=サイモンが、果たしてどの程度正確に理解して批判をしていたのかについては、注意がいる。


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