Mintzberg, H., & Waters, J. A. (1985). Of strategies, deliberate and emergent. Strategic Management Journal, 6(3), 257-272. ★★☆ 【2011年7月20日】【2013年6月12日】

 事前にきちんと周到に計画された「周到な戦略」(deliberate strategy)と「創発的戦略」(emergent strategy)を両極とした連続体で、純粋な周到な戦略側から、純粋な創発的戦略側に、(1)計画された(planned)戦略、(2)企業家的(entrepreneurial)戦略、(3)イデオロギー的(ideological)戦略、(4)傘(umbrella)戦略、(5)プロセス(process)戦略、(6)非連結的(unconnected)戦略、(7)コンセンサス(consensus)戦略、(8)強制された(imposed)戦略と並べて説明している。

 ただし、何をもって創発的というのか、はっきりしていないので、そこを整理しておく必要がある。まずFigure 1で示されるように、事前に「意図された戦略」(intended strategy)は、実現されたものと実現されなかったものに分かれる。このうち実現されたものを「周到な戦略」と呼んでいて、それと事後的に湧いてきた(?)戦略「創発的戦略」が合わさって、「実現された戦略」(realized strategy)と呼ぶ。もはや、この段階で、前述の連続体と概念的に錯綜していることが分かるが、ここは我慢して、議論を先に進めると、何を創発的と呼んでいるのかについての手掛かりはあり、企業家的戦略の議論の中で、(a)内容の詳細が途中で現れてくる。(b)完全に変わってしまってもかまわない。ということを創発的特徴(emergent characteristics)と呼んでいる(p.261第2段落)。

 このことを踏まえると、事前に計画した通りに進めれば(1)だが、(a)事前に細部まで計画していなければ(2)(3)(4)(5)となる。さらに、(b)どのくらい変わるのかという視点で見ると、本来はFigure 1のように周到な戦略と創発的戦略が化学反応を起こして実現した戦略に変わるはず(7)なのだが、化学反応を起こさずに、別個に併存しているのが(6)、そして、外圧でボコンと叩かれて戦略が変わるのが(8)(黒船来襲で明治維新が起きたようなもの)。

 ただし、この解釈も多少無理があって、実は(2)企業家的戦略の場合はビジョンが経営者個人の頭の中にあるので、変えるのは簡単だが(p.261)、(3)イデオロギー的戦略の場合は、組織メンバーで共有されているので、より不変不易(immutable)である(p.262)と書いてあり、素直に受け取れば、(3)よりも(2)の方がより創発的ということになるが、よく分からない。


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