Holweg, M., & Pil, G. K. (2008). Theoretical perspectives on the coordination of supply chains. Journal of Operations Management, 26(3), 389-406. ★☆☆ 【2012年10月17日】

 自動車産業の三つのOEMのサプライ・チェーンの事例研究で、ITシステムの導入の際に得られた発見を、三つの理論的レンズ(three theoretical lenses)を使って分析したものとされている。ここで、OEMとは、自動車産業では、自社ブランドをもった自動車メーカーのことを指しているので、通常のOEMとは意味が異なるので注意がいる。とはいえ、正直、何をやっているのかよく分からない論文である。同じ事象を三つの理論で分析しているわけではなく、どうも、それぞれの理論に合った事象があった……ということらしい。しかもその三つの理論のうち、RBV (resource-based view; リソース・ベース理論)はまだ一般的だが、CAS (complex adaptive systems theory)やAST (adaptive structuration theory)は、解説を読んでもよく理解できない。CASはBertalanffyの一般システム理論(general system theory; なぜかこの論文ではsystemsと複数形になっているが(p.399)、systemと単数形を使うのが一般的。著者たちは一般システム理論が何かをよく知らずに使っているのではないだろうか)に基づいているらしいが、どうもつながらない。ASTに至っては、挙げられている事象と合っているのかどうかも疑問である。いずれにせよ、ジャーナルが、このような論文を許容し続けると、近い将来、サプライ・チェーン研究は、経営学との共通言語を失うことになるだろう。


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