Imai, M. (1986). Kaizen (Ky’zen): The key to Japan’s competitive success. New Yok, NY: Random House Business Division.
今井正明 (1988/1991)『カイゼン: 日本企業が国際競争で成功した経営ノウハウ』講談社. 講談社文庫版, 講談社.  【解説】

 日本企業は、欧米企業と比べれば非マニュアル的だと思われがちである。しかし、日本の会社でも、従業員は設定された標準に基づいて働いており、図1の上の図のように(横軸が何なのかは想像がつかないが)、そうした標準の「維持」と、標準自体を向上させる「現状打破」という二つの要素から仕事が成り立っていると考えられている(今井, 1991, pp.48-50)。つまり、「標準のないところにカイゼンはない」のであり、「標準はよりよい標準に取って代わられるためにのみ存在する」(今井, 1991, pp.157-158)。それに対して、欧米の多くのマネジャーは、図1の下の図のように仕事を理解しており、カイゼン概念が入ってくる余地がほとんどないという(今井, 1991, p.52)。


図1. 職務機能に対する日本的な見方と欧米的な見方
(出所) Imai (1986) p.7 Figures 1.3 and 1.4。

 著者は1957年から約5年間、米国ワシントンの日本生産性本部米国事務所で働いていて、米国産業の高生産性の秘訣を探るために日本から続々とやってくる生産性使節団の案内役、通役を務めていた。第1章冒頭(今井, 1991, pp.40-42)の次のような逸話が印象的――1950年代、日本の視察団は、進んだ米国の工場を視察に行った。その25年後、視察団のメンバーが、かつて視察した工場の一部を再訪したところ、25年前と全然変わっていなくて驚いた。日本では、工場が四半世紀もの間、何の変化もなく放置されているなどは想像もつかないことだから。

 「日本語版へのまえがき」によると、日本語版は英語版の「翻訳」という扱いではないらしい。英文原著から手を加えた部分もあるし、QCサークルのケースは差し替えたと記されている(今井, 1991, p.11)。


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